本日も、過去作を紹介し、自分の黒歴史と決着をつけて、成仏してもらおうという企画です。
しばしのお付き合いをよろしくお願いします!

「いつかヒーローになる日」は、私の26年のプロマンガ家生活において、初めての長編連載作品でありおそらくこの先も、4冊というボリュームの続巻ものは描くことはないと思われ、最長の作品であります。
そういう意味では、貴重で大切な作品なんでしょうけど、私の中では長らく封印しておきたかった、恥ずかしい作品でした。
というのは、私はこの連載作品を準備中~連載終了するまでの2~3年間が、自分のプライベートな人生がもっとも闇落ちしていた期間だったからであります。
過去作いつかヒーロー0



この間に、私は8年近く一緒にいた恋人と別れ、出会ったばかりの人と電撃的に結婚し、その夫とはもめにもめて、ドロドロの新婚生活を経て離婚し、心をどっぷり病んでいたのです。
離婚の原因はもちろん、両者にあります。でも、心と体に受けたダメージから回復するには、長い年月がかかりました。深夜徘徊、ゲーム依存症になり、アルコールに逃げたり、心療内科にかかったり、いろんな方面でもがき続け、長い旅路の末、だんだんと回復していきました。当時頂いていたお高い原稿料も、いろいろ無駄に使い果たしてしまいました。

結婚前後の数年間は怒涛の数年間で、連載を数誌掛け持ったり、引っ越しして仕事場を持ったら風俗街のど真ん中だったり、体も壊していたし、嫌がらせを受けたり、自分でもわけのわからない数年間でした。

お恥ずかしいのですが、上がったり下ったりそしてさらに真っ逆さまに落ちる、というメンタルの中で、このせっかく頂いた「長期連載作品」を、「ツラい、ツラい」と言いながら書き綴ってしまったのです。

内容は、「幼馴染の二人の、愛を貫くための試練の13年間の物語」ですが、はっきり言ってホラーです。当時の編集部内でも「怖い」「どうしてここまで暗い」と不評でした。
おそらく、自分が当時の編集長なら、すぐさま連載を終了させるか、大幅な方向転換を命じたと思います。
それくらい悲惨な内容です。


※あらすじ 主人公アツシは、5歳でタマミと恋に落ちる。小学生、ふたりは着実に愛をはぐくみ、周囲も公認の彼氏彼女になる。だが小5のある日、タマミがアツシの住む団地の一角で、変質者の被害に遭う。「彼女を一生守る」という、幼き日に掲げた誓いをアツシは実行し続けるために、もがき苦しむことになる。幼馴染5人の友情、そしてアツシと兄、カナメの確執を織り交ぜながら、物語は壮絶な展開に発展してゆく。

過去作いつかヒーロー6
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これは、当時出会って結婚していた夫がプロ格闘家で、彼と出会ったきっかけが格闘技の取材だったこと、それとネットで見つけたやけどの広場、というサイトがとても興味深く、その広場の運営者さんにも取材を経て、自分の中で「弱さと強さ」「たった一人に貫く執着と愛」みたいなものをごっちゃ混ぜに融合させたカオスなストーリーです。


自分では、連載スタート時からラストまでストーリーが決まっていたし、黙々と1話1話をこなしていただけなんですが、当時の少女漫画としてはありえないほどキツイ内容だし、絵も話も怖かったと思うのに、自己の私生活が痛めつけられすぎていて、感覚がマヒしていたんだと思います。

ではなぜそんな作品が、打ち切られもせず最後まで連載されていたのかというと、私はその数年前に「おっぱいをとったカレシ。」「少女A ~sex・ドラッグ・池袋~」「わたしのからだ、わたしのねだん」という単発のコミックスをそれぞれに10万部ほど売り上げており、センセーショナルなものを得意な作家として、ある程度期待されていたからでした。
だけど、「男の子が主人公」「幼馴染の恋をテーマとした普遍的な物語」をやらせてみたら、ぜんぜんウケなかった、という結果だったのです。

そんな感じで、お情け的にコミックスは出してもらえたし、無事に作品は完結したのですが、全く人気もなく、内容も暗いし、読み返すと闇の時代がよみがえってきそうで、私は恐ろしくてこの作品をなかったことにしてしまったのです。
でも、電子配信され、ずっと自分のディスコグラフィーにも載り続けるので、抹殺することはできないので、放置したまま時は流れました。

その後、ある程度ティーンズラブや、女性マンガジャンルでも明るい作品を描けるようになり、私生活でも立ち直り、再び素敵な恋を見つけて再婚。

メンタルも元気を取り戻し、なんとかマイペースに自分の作品を作り続けてこられました。

正直言って、今現在は幸せな作家生活を送れていると思います。
そんなある日、私の封印していたこの「いつかヒーローになる日」に興味をもち、電子配信を購入して読んでくださった方がいました。
「シンパシーを感じて、いいマンガを描く方だなと思いました。私の原作をぜひコミカライズしてほしい」というメールをいただきました。

めちゃめちゃうれしい反面、黒歴史な封印作品を読まれた、恥ずかしい、という羞恥心も感じました。
もう連載終了からかなり経つし、自分でも読んでみよう、大丈夫だろう、という気持ちで、ン年ぶりにこの作品を読んでみました。

ズバリ、自分の閉じていた傷跡を開いて、のぞき込むような気分。当時のしんどかった生活が思い出され、つらかったです。
しかも、案の定絵は怖いし下手だしキモいし、(まあ、今も絵は怖いんですが)目も当てられない内容でしたが、当時の私はそれでも、このキャラクターたちを愛して、一生懸命作画していたんだなあ、と愛おしさもよみがえってきました。
主人公のアツシが通う学校の教師たちとか、アツシの高校の親友モリカンとか、気に入って描いていたのを思い出し、「ああ、たしかに楽しかったこともあった」と胸アツな思いも。

社会科教師2
社会科教師
保健教師



そして何より、主人公のアニキ「要」というキャラ、自分では忘れていたけれど、「ヤンキー彼氏のきよはるクンはがっつくのがお好き」の、きよはるの兄とまんまモロ被り、ということにも気づきました!!

アニキモロ被りな件

要

じぶん、ヤンキー、黒髪長髪キャラ、好きすぎやろ!!

しかしよくここまで、主人公を痛めつけることができたよな!

とツッコみたくなりました。そんな感じで、封印していた作品ではありますが、どなたか一人でも、心に響くものがあったとしたら、あんな暗い時代でも、がんばって描き切った苦労も報われると思うので、また少しでも興味を持たれた方がいらっしゃれば、よろしくお願いします、読んでみてくださいね!コチラから↓

https://www.cmoa.jp/title/98984/


昔なら、「この単行本はもう廃版になりました。もう読めません、ブックオフで気長に探してください」みたいな幻の作品でも、こうして電子書籍化され、作者が新作を描き続ける限りずっといつでもどこでもスマホでも読めるという、たいへん有難い時代になりまして、幸せな限りです。

こんな風な気持ちにさせてくださった、メールをくださった方には心より感謝申し上げます。
その方も、物語を作っておられる方で、今その方の原作物を、コミカライズする企画が進行中です。形になり、世に出る時が来たら、またお知らせできると思います。お楽しみに~